圧倒的なスリルとスピード感。人の欲望渦巻くエログロ警察小説【ジウ/誉田哲也】
どーも。Kamiです。
いやー読みましたよ。ジウシリーズ。
ドはまりしてしまい、すぐに全巻揃えました。
とにかく面白かったことを伝えたいので、今回は前置きなしでジウシリーズの書評をさせていただきたいと思います。
まずジウシリーズの概要ですが、ジウシリーズというのは著者・誉田哲也さんの大人気警察小説です。ドラマにもなっています。一冊で完結する内容もありますが、前作の登場人物が続編に出てくるので、シリーズとしても楽しめる内容となっています。
順番は下記の通りになります。
ジウ
ジウⅡ
ジウⅢ
↓
国境事変
↓
ハング
↓
歌舞伎町セブン
↓
歌舞伎町ダムド
↓
ノワール 硝子の太陽
↓
歌舞伎町ゲノム
僕は最初はシリーズものだと知らずにノワールを読んでしまい、あまりにも衝撃的な面白さだったので、さかのぼって最初から読み直しました。
正直どこから読んでも面白いし内容も理解できます。
そして全部読みたくなると思います。
個人的に一つだけマイナス面をあげるとするならば、グロい描写が描かれているところです。
僕自身そういう内容が得意ではないため、その部分は斜め読みしてほとんど飛ばしながら読みました。(笑)
それを踏まえても圧倒的に面白かったです。
ここではそんなジウシリーズの原点であるジウⅠ~ジウⅢの内容について紹介したいと思います。
国境事変以降の内容はまた別に紹介できればと考えています。
このジウという題名の作品は3冊で完結する内容となっています。
本作でのメインの主人公は門倉美咲(かどくらみさき)と伊崎基子(いざきもとこ)。
警視庁刑事部捜査第一課特殊班捜査第二係の巡査である。
そして全作品で一貫して登場する人物が刑事部捜一課殺人犯三係の東弘樹(あずまひろき)主任。
東はとある誘拐犯の犯人を追っていた。
通報してきたのは誘拐された田辺利憲(たなべとしのり)の母親の田辺春子(はるこ)。
春子は誘拐犯から要求された身代金5千万円をもって、犯人の指示する場所に向かっていた。無論、犯人にばれないように警察も秘密裏に援護している。
しかし警察が一緒にいる可能性を警戒した犯人は、春子に何度も指定場所を変えさせ、警察が現場に介入できないようにしていた。
そして犯人は何度目かの指示で、陸橋の上を指定してきた。
春子はその待ち合わせ場所でとあるビニール袋を拾う。その中には透明の液体と一緒に指が入っていた。
そう、犯人は警察がついてきていることを知り、春子に『警察をまいてこないと、息子の指が全部なくなるぞ』と脅迫電話を掛けていたのだった。
息子を助けたい一心で春子は警察に『もう、ついてこないで』と言い、犯人に一人で身代金を渡しに行く。
そう言われた東には為す術もなく、犯人を取り逃がしてしまうのだった…。
門倉美咲は170センチ以上の長身で、セミロングの可愛らしい顔立ちをしていて愛嬌がいい、いかにも女の子という性格だった。
対して、同僚の伊崎基子は顔立ちは悪くないものの、化粧気は全くなく、趣味は筋トレとバイクといういかにも男勝りな性格である。
事件現場の対応も対照的だ。
美咲は犯人に語りかけながら、じっくりと時間をかけて投降させてきた。
一方基子は自慢の運動神経を活かし、一瞬のスキをついて突入して犯人を捕まえるというスタンスだった。
言うまでもなく考え方が違うので、二人は犬猿の仲だった。というか基子が一方的に美咲のことを敬遠していた。
ある日、近くで人質立てこもり事件が発生した。
すぐさま招集がかかった美咲と基子の所属する特殊班だったが、その現場で思わぬ事態に発展することになる。
犯人が籠城して約5時間、交渉の末、犯人に食事を提供することで接触するところまで漕ぎつけた。犯人からの条件は若い女性に運ばせろという指示。
その食事を差し入れる役に抜擢されたのが美咲だった。
食事を運んできた美咲に犯人から「服を脱げ」との要求があった。
言われるまま服を脱ぎ始める美咲。そのまま美咲は人質となってしまう。
犯人は下着姿の美咲を人質に玄関に向かう。
しかしその玄関の近くで待機していたのが同僚の基子だった。
犯人が待機している警察官を視認し、怒声を上げた。その発声を合図に基子が犯人めがけて突入し、犯人を拘束することに成功した。
しかしその騒乱で逆上した犯人に美咲はけがを負わされてしまう。さらにそれより問題になったのはマスコミによって下着姿の美咲の写真が週刊誌に取り上げられたことだった。
立てこもり事件は収束したものの、マスコミに羞恥を取り上げられてしまった美咲は左遷に近い形で移動させられてしまう。
対して、犯人を拘束した基子は、その女性離れした強さを買われSATへ栄転することとなる。
美咲の次の勤務先はあの東主任率いる刑事部捜査一課殺人犯だった。
東は先日取り逃がした誘拐犯の行方を追っていた。
そして東と美咲はタッグを組み、犯人検挙へと乗り出していく。
一方、SATへと転勤を命じられた基子はそこで人生を変える出会いをする…。
はたして美咲と基子の運命は?…。ジウの意味とは?…。
スピード感とスリル満載のサスペンスミステリー。
この小説はグロいです。でもとてつもなく面白いです。そしてちょっぴりエロイです。(エロさはちょっとアブノーマルです。(-_-;))
もしかしたらこの何が起こるか分からないドキドキ感があるからこそ面白いのかもしれません。
今は同著による別の人気シリーズ、姫川玲子シリーズも読んでいます。
こちらもまた紹介出来たらなと思っています。
多少の好みはあるものの、ハマる人はものすごくハマると思います。
ぜひ読んでみてください。
では(^^)/~~
ノスタルジックな気分に浸る心の故郷小説。【夏美のホタル/森沢明夫】
どーも。Kamiです。
皆さんは田舎に行ったことはありますか?
また、ホタルを見たことはありますか?
僕は田舎出身なので、ホタルを実際に見たことがあります。
まぁ実家の近所ではなく、実家よりももっと田舎のおばあちゃんちの近くでですけど。
車1台通らないような真っ暗な景色の中、足元に微かに光る黄色い光。
遠目で見ても絶対に気づかないような薄い光だけど、目を凝らすとしっかりと存在を示すように光っている。
まるでマッチを擦ったかのように、光が点いたり消えたりしている。
周りの闇が深いほどはっきりと写る光。
ホタルってすごく幻想的なんですよね。
って言っても、僕も最後に見たのは高校生の時なんで今見るとまた違った感情になれるのかもしれません。
そんなどこか懐かしくてきれいな気持ちになる小説が今日紹介する『夏美のホタル』です。
著者は森沢明夫さん。この方の小説はきれいで心温まる小説が多いです。
本作も映画化されましたね。僕はまだ見れてないんですけど、絶対見たいと思います。
主人公は相羽慎吾(あいばしんご)。
美術大学の4回生で写真家の卵である。卒業制作のための作品テーマの模索と素材写真を取りに彼女と山奥にツーリングに来ていた。
その彼女というのが一つ年上の河合夏美(かわいなつみ)。
幼稚園の教諭をしている。
HONDAの赤いCBX400Fを運転しているのはスピード狂の夏美である。
そのツーリング途中で夏美がトイレに行きたくなり、たまたま寄った古いよろず屋が
今回舞台となる「たけ屋」であった。
たけ屋は昭和の香り漂う懐古的な建物だった。
慎吾は外で待っていたが、そのノスタルジックな建物に惹かれ、思わず一眼レフのシャッターを切っていた。
せっかくなので慎吾もトイレを借りておこうと中に入ると、ごま塩頭の親しみやすい笑みのおじいさんが居間でお茶を飲んでいた。
ちょうどそのタイミングでトイレからおばあさんと一緒に戻ってきた夏美は、持ち前の愛嬌の良さですっかりおばあさんと仲良くなっていた。
おじいさんの名前は福井恵三(ふくいけいぞう)。おばあさんの名前は福井ヤスエ。母子だった。
そのまま慎吾と恵三も加わりしばらく4人で談笑し、そろそろ店を出ようとすると、 ヤスエが来月には近くの川でホタルが飛ぶと言う。
興奮した夏美は即座に来月も来ようと慎吾に提案する。
慎吾も写真を撮りたいと思ったので二つ返事でOKすることにした。
そのたけ屋での出会いをきっかけに慎吾と夏美の忘れられない夏が始まっていく…
この小説は泣きます。
悲しい涙ではなく、暖かい涙が溢れてきます。
日々の忙しさに追われ、心に余裕がなくなっている今、ちょっと足を止めて心の故郷に思いを馳せてみませんか。
ぜひ読んでみてください。
思わず大切な人の声が聞きたくなる、心温まる恋愛小説。【カフーを待ちわびて/原田マハ】
どーも。Kamiです。
ついに4月に入りましたね。
もうそろそろ桜が満開ですね。季節はもう春です。
しかしながら、私の春はまだやってきそうにありません。
……誰が興味あんねん!!
失礼しました。本題に移ります。
皆さんは大切な人、好きな人はいますか?
それぞれにいらっしゃると思います。家族でも、両親でも、友達でも。
人を好きになる気持ちっていいですよね。特に恋をしてしまったとき。
人を好きになるのは理屈じゃありません。
自分でも予測できないものです。
タイプじゃないのになんか気になる。LINEの返事が来ないとソワソワする。
そういう感情って好きな人じゃないと湧きませんよね。
そんな、人を好きになるのっていいなと思わせてくれる小説が今回紹介する『カフーを待ちわびて』です。
著者は原田マハさん。
先日、池井戸潤さんの作品はハズレがないと言いましたが、この方もどの作品も面白いです。
女性の方ですが、女性目線になり過ぎず、でも女性らしさもしっかりある。だから、共感できる人は多いと思います。
さて、内容ですが…
主人公は友寄明青(ともよせあきお)。
沖縄の離島で亡くなった祖母から引き継いだ小さな商店を営んでいる。
繁盛期は観光客が来て忙しいが、普段は近所の小学生やお年寄りの井戸端会議の場になっている。
家族は愛犬のカフー。それと裏庭に住んでいる巫女(ユタ)のおばあ。
おばあは血縁関係はないが、家族がいなくなった明青の面倒を見てくれている。
沖縄には今もユタが存在するが、明青はこのおばあは本物の神人(カミンチュ)だと信じていた。というのも、漁に出て事故死した父も、弟を死産した後、出ていった母も、カフーが来た日も、おばあのウシラシ(お知らせ)を告げられてきた。
あまりにも当たるので、今では半信半疑と自分に言い聞かせるようにしていた。そうでないと、期待と不安に押しつぶされそうになるためだ。
その日もいつも通りおばあの家で晩御飯を食べていた。
すると突然おばあが「ウシラシ(お知らせ)あったかね。」と発した。
何のことか分からずきょとんとし、その場は受け流した明青だったが、家に帰り郵便ポストを覗くと『幸』という名で明青宛てに封筒が届いていた。
その封筒をしばらく眺め、封を切ると、几帳面な字で
『ある神社であなたの絵馬を見て手紙をしたためてます。…私をあなたのお嫁さんにしてくださいますか。近々訪ねる決心をしています。 幸』
との記載があった。
それを読んで明青は思いだした。
今年の2月に北陸に旅行した際に、ある神社で絵馬に『嫁に来ないか』と書いたことを。しかしそれはほとんどウケ狙いで、昭和の歌謡曲のタイトルを書いたものだった。
明青はなぜかこの手紙を信じる気になり、その日から『幸』を待ち続けた。
しかし待てども待てども『幸』は現れなかった。
明青は来ないかもしれない誰かを待ち続けることに苦痛を感じ、会ったことのない『幸』との別れをするために、手紙を燃やすことにした。
次の日、明青がいつも行く浜辺に白いワンピースの髪の長い女性が立っているのに気づいた。
すれ違おうとした瞬間、女性が『これはガジマルの木ですか?』と声をかけてきた。
『そうですよ、』と返し、軽く会釈をして立ち去ろうとすると、その女性は『もう一つだけ…』と明青を呼び止めた。
そして『友寄明青さんのお宅はどこでしょうか?』と尋ねてきた。
声を震わせながら『うちですけど。』と答えた明青に女性は、『はじめまして。幸(さち)です。』と言うのだった。
この『幸』という女性はいったい何者なのか?
明青の恋の行方は?
あたたかくて、やさしくて、ちょっと切ない極上の恋愛小説。
この小説読むと本当に沖縄に行きたくなります。(笑)
やっぱり人を好きになるのっていいですね。
ちなみに『カフー』っていうのは『果報:良い知らせ・幸せ』って意味らしいです。
春が目の前に迫った今、沖縄に思いを寄せて、優しい恋愛小説を読んでみませんか?
では(^^)/~~